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第4回 リモート監査の課題と今後
- 2021.04.09
- 《連載》監査人の部屋
監査法人長隆事務所では、今夏より「オンライン監査」を導入いたしました。
実務にあたる会計士が「オンライン監査」をテーマにその実態を綴ります。
第4回 リモート監査の課題と今後
監査法人長隆事務所 公認会計士 森本 明浩
1.リモート監査の効果
昨年から続くコロナ禍の影響で、依然として基本的な感染症対策が求められており、リモートワークや時差出勤等が推奨されている。このような状況において、当監査法人でもリモート監査を推奨しており、多くの監査先で導入している。特に地方の監査先においては、東京などの感染拡大地域からの訪問受け入れは抵抗があるように感じられ、感染拡大防止の観点で有効な手法になっている。
2.リモート監査現場の現状と課題
リモート監査は、WEB会議システムを利用した打ち合わせと、直接的(監査人が監査先PCにアクセスし必要な資料をダウンロード)または間接的(監査先から電子データを受領)に入手した監査資料の閲覧及び分析等により実施している。この中で、リモート監査の最大の課題は、監査先が紙面で保存している資料の入手である。
多くの監査先は、引当金計上や経過勘定処理等の決算資料についてはExcel等で作成・保存しているものの、固定資産取得に係る契約書や経費の請求書等は原本を紙面で保存しているケースが多い。このため、期中取引の検証にあたって監査人から請求書等の提出を依頼された際は、紙面で保存している資料をPDF化する作業が発生することになり、現状のリモート監査の最大の課題となっている。
この紙面保存資料が多いことは、会計監査時に限った問題ではなく、紙資料の確認作業や整理保存作業が発生する点で、監査先のリモートワークや業務効率化を阻害する大きな要因にもなっているように思う。
3.リモート監査の今後
現時点では、多くの監査先が請求書等を紙面で保存しているため、これまでの訪問を基本とした監査アプローチを採用した場合、監査先に多数の資料のPDF化を依頼することになる。監査人としては、監査基準を逸脱しない範囲で、監査先のリスクポイントを的確に把握し、分析的手続を中心とした監査アプローチを採用することが望まれる。こうすることにより、監査先に依頼するPDF化資料の数を減らすとともに、監査業務自体も効率化することになるだろう。