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第5回 オンライン監査による棚卸立会・実査

監査法人長隆事務所では、今夏より「オンライン監査」を導入いたしました。
実務にあたる会計士が「オンライン監査」をテーマにその実態を綴ります。


第5回 オンライン監査による棚卸立会・実査

監査法人長隆事務所 委託公認会計士

(棚卸立会・実査とは)

 本日は会計監査で重要な監査手続である年1回のイベント、棚卸立会・実査である。棚卸立会とは、期末日に会計士がクライアントの棚卸現場へお伺いして、クライントの棚卸の実施状況が適切であるかどうか、棚卸在庫の保管状況が適切であるかどうか、期末在庫の数量が適切にカウントされているかどうか確認する監査手続である。会計監査の主な手続は、財務書類と資料の照合や財務分析であるが、実際に棚卸在庫(製品・商品・仕掛品・材料等)の現物を期末日に確認する監査手続が棚卸立会である。また、実査は期末日の保有現金等の現物資産を数える監査手続である。これらは年1回の1発勝負の監査であるため、緊張感のある監査手続である。

(事前準備)

 会計士が棚卸現場に行かないオンライン監査での棚卸立会・実査は本当に可能なのだろうか?という疑問は少なからずはある。
 コロナ禍のためにオンライン監査が導入されたが、コロナ禍で今一番コロナと闘っているのは医療現場であり、万が一でも、無症状の感染している会計士が医療の現場へ入ってしまうと、そのダメージは図りしれない。オンライン監査は、医療法人監査のためにあると言っても過言ではない。
 クライアントへオンライン監査で棚卸立会・実査を実施することを伝える。オンライン監査では事前の準備が重要になる。事前に資料を依頼し、入手した。日本公認会計士協会が公布しているリモートワーク対応第2号「リモート棚卸立会の留意事項」を読み込む。医療法人の場合の棚卸在庫の対象は、医薬品と診療資材になる。医薬品のほうが金額的にも質的にも重要性が高いため、棚卸立会のメインは薬剤部の医薬品になる。

(実査)

 まずは実査からである。医療法人本部の小口金庫を、担当者へカメラ付PCのカメラの前に持ってきてもらう。現金の現物はこちらでは数えることはできないので、担当者が現金を数える様子をじっくりと観察する。札束も硬貨もしっかり数えてもらう。数えた枚数を自分の手元にある金種表に書き込む。書き込み後、間違いがないかこちらも枚数を伝えて担当者へ確認する。現金を数えたあとに、小口金庫の中へカメラを向けてもらい、他に現物資産となるものがないか観察する。他に何もなかった。
 実査終了後に、法人本部が作成した期末日金種表をメールで送ってもらい、照合を実施した。一致している。無事に実査は終わった。

(棚卸立会)

 次は棚卸立会である。薬剤部にカメラ付PCを置いてもらう。薬剤師の医薬品のカウント方法を確認したところ、適切にカウントしている。入手した医薬品リストの中から、医薬品をピックアップして、それを数えてもらう。医薬品を指定して、担当者が数えるのを観察すると同時にこちらも数える。画面越しでも十分に確認できる。品目名が見えにくい医薬品は担当者へ読んでもらう。実在性の確認のために、医薬品リストから実際の医薬品の数量が一致してることを確認し、網羅性の確認のために、実際の医薬品の数量が医薬品リストに計上されていることを確認した。数点数えたあと、今度はこちらから高単価の医薬品を指定する。クライアントも高単価である医薬品を指定されると予想していたのか、すぐに対象医薬品を準備して頂き数えることができた。
 次に、廃棄品・消費期限がある医薬品があるかどうか、適切に管理しているかどうか確認する。カメラで医薬品棚を確認すると保管・区別の状況は適切であることが確認できた。一通り監査手続が終わった後に、担当者へ棚卸は適切に実施されていることを報告した。無事に棚卸立会は終わった。

(感想)

 オンライン棚卸立会・実査では自分の代わりにクライアントに動いてもらわないといけない。画面越しの確認であったが、クライアントの協力もあり、画面越しにじっくり数えることができた。オンライン監査という会計監査では目新しいツールを使っている感じはするが、その実はクライアントとの連携プレーが必要な業務であると痛感した。
 監査する側・監査される側と立場は違うが、しっかりと感染予防しながら共に医療法人をより良くしようという気持ちは同じであるため、オンライン監査での棚卸立会・実査は成り立つ業務であると思う。

以上

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