監査法人 長隆事務所

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第2回 医療機関に対する厚生局の指導・適時調査とは(1)

 連載の開始に当たり第1回目に保険診療のルールである算定要件や施設基準の取り扱いを正しく理解する必要性をお伝えさせていただきました。そのことがより多くの診療報酬の獲得、病院の収益増加につながります。このように診療報酬請求には攻めと守りが考えられますが、今回は厚生局が行う指導の実施方法などについてお話しますので、守りの視点を確認しましょう。

 指導は、すべての保険医療機関、保険薬局、保険医、保険薬剤師が対象に行われるものです。省令や告示等に定める保険診療の取り扱い、診療報酬の請求等に関する事項について、より理解を深めることを主眼として、懇切丁寧に行うこととされています。集団で実施されるものと個別に実施されるものがあり、個別に実施されるものが個別指導になります。指導形態は、集団指導、集団的個別指導及び個別指導となっています。

 集団指導は、指導対象となる保険医療機関等又は保険医等を一定の場所に集めて講習等の方式により行われます。新規指定の保険医療機関等、診療報酬の改定時、保険医療機関等の指定更新時、保険医等の新規登録時などに行われます。

 集団的個別指導は、指導対象となる保険医療機関等を一定の場所に集めて講習等の形式で行われる方法と、個別に簡便な面接懇談方式で行われる方法がありますが、現状ではそのほとんどにおいて講習等の形式で行われる集団指導方式で実施されています。

 個別指導は、指導対象となる保険医療機関等を一定の場所に集めて又は当該保険医療機関等において個別に面接懇談方式により行われます。

 保険医療機関等の機能、診療科等を考慮し算出された診療報酬明細書の1件当たりの平均点数が高い保険医療機関等(いわゆる「高点数」)について、その平均点数が高い順に選定して、集団的個別指導が行われます。

 新規指定の保険医療機関等については、概ね1年以内にすべてを対象として個別指導の形態で新規指導を実施します。これ以外の一般的な個別指導の選定基準は次のとおりとされています。①診療内容又は診療報酬の請求に関する情報の提供があり、指導が必要と認められた保険医療機関等②個別指導の結果、「再指導」であった保険医療機関等又は「経過観察」であって改善が認められない保険医療機関等③監査の結果、戒告又は注意を受けた保険医療機関等④集団的個別指導を受けた保険医療機関等のうち、翌年度の実績においても、なお高点数保険医療機関等に該当するもの⑤正当な理由なく集団的個別指導を拒否した保険医療機関等など。

 個別指導においては、算定要件を満たさない請求が確認された場合には、新規指導においては確認された事例そのものについて、それ以外の指導においては過去1年間の同様事例について、過請求された診療報酬の自主返還が求められます。正当な理由なくして個別指導を受けなかった場合、度重なる個別指導によって改善が見られないときには、監査対象に選別されます。

 集団指導は診療報酬に関する最新の情報を得ることができる機会でもあるので積極的に出席すべきです。なお、高点数の集団的個別指導については、正当な理由なく欠席すると拒否とみなされ個別指導の対象となりますので注意しましょう。集団的個別指導の日程を失念して拒否とみなされ、個別指導の対象となり対応に苦慮した例は少なくありません。集団的個別指導や個別指導の通知は開設者宛に簡易書留郵便で送付されますが、未開封のまま理事長や院長の机の上に埋もれてしまい失念された事例もありますので注意しましょう。また、前述の②から⑤に該当しない場合は、①の情報提供による個別指導ですので、的を絞って指導が行われ多額の返還金が発生することがあります。さらに監査対象となることもありますので大変危険です。高点数の基準となる点数は毎年更新され各厚生局のホームページに掲載されています。基準となる点数を確認しましょう。

 新規指導を含めた個別指導は、保険診療のルール再確認の機会として捉えればよいのですが、日頃からの理解が重要です。厚生労働省のホームページにおいて、集団指導用資料「保険診療(保険調剤)の理解のために」、個別事項に関する「保険診療(保険調剤)確認事項リスト」などが公表されています。これらを活用するなど日頃から保険診療のルールに対する理解を深めることが、診療報酬返還を防止する「守りの視点」でとても大切なことなのです。
監査と適時調査については次回以後にお話させていただきます。    

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