監査法人 長隆事務所

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第4回 医療機関に対する厚生局の監査とは

 これまでに第1回目で医療機関の診療報酬請求に際して、保険診療のルール(診療報酬の算定要件、施設基準など)から逸脱したものであれば返還を求められこと。また、架空請求、付増請求、振替請求、二重請求、その他の請求など不正の内容が認められれば、監査が実施され保険医療機関等の指定取消や保険医等の登録取消の行政処分とされることなどをお伝えさせていただきました。
 
 第2回目と第3回目では守りの視点として厚生局が行う指導・適時調査の実施方法などについてお話しました。監査の対象となることは保険診療のルールから大きく逸脱した極めて重大かつ危険な状況と言えますが、今回は監査に関する取り扱い等を参考として確認しましょう。
 
 監査は保険医療機関等の診療内容又は診療報酬の請求について不正又は不当が疑われる場合等において、的確に事実関係を把握するために行われます。監査後、確認された事実に応じ、取消処分・戒告・注意の必要な措置が採られます。
 算定要件を満たさない請求が確認された場合には、過去5年間にさかのぼって、過請求された診療報酬の返還が指示されます。保険者への返還金額は過請求額に対して4割増の額となります。

 取消処分とは保険医療機関等の指定取消処分及び保険医等の登録取消処分のことであり、その内容が公表され、原則として5年間は保険医療機関等の再指定及び保険医等の再登録を受けることができないこととなります。戒告又は注意を受けた保険医療機関等に対しては、一定期間内に個別指導が行われます。
 取消処分は次の何れかに該当する場合に対象となります。なお、正当な理由なくして監査を拒んだ場合にも取消処分の対象となります。
・故意に不正又は不当な診療を行った場合
・故意に不正又は不当な診療報酬の請求を行った場合
・重大な過失により、不正又は不当な診療をしばしば行った場合
・重大な過失により、不正又は不当な診療報酬の請求をしばしば行った場合

戒告は次の何れかに該当する場合に対象となります。
・重大な過失により、不正又は不当な診療を行った場合
・重大な過失により、不正又は不当な診療報酬の請求を行った場合
・軽微な過失により、不正又は不当な診療をしばしば行った場合
・軽微な過失により、不正又は不当な診療報酬の請求をしばしば行った場合

注意は次の何れかに該当する場合に対象となります。
・軽微な過失により、不正又は不当な診療を行った場合
・軽微な過失により、不正又は不当な診療報酬の請求を行った場合
 
 監査の方法等に関してですが、事前調査として厚生局の監査担当官は、原則として監査を実施する前に診療報酬明細書による書面調査を行うとともに、必要と認められる場合には、患者等に対する実地調査を行います。監査時には、監査対象となる保険医療機関等の開設者及び管理者の出席を求めるほか、必要に応じて保険医等、診療報酬請求事務担当者、看護担当者及びその他の従事者又は関係者の出席を求めます。的確に事実関係を把握し、公正かつ適切な措置を採るために詳細に実施されますので、時には10回を超えて監査が行われることもあります。
 
 監査の端緒としては、指導又は適時調査において不正又は不当が疑われる場合がありますが、保険者、医療機関従事者及び医療費通知に基づく被保険者等からの通報が多いとされています。厚生局では、多くの情報から同一保険医療機関等に関する複数情報や信憑性等を慎重に判定して事前調査の結果等も踏まえ、監査対象の選定を行うこととなります。
 
 改めてお伝えします。保険診療は公法上の契約であり、診療側と保険者側の双方の信頼関係が基本となります。そのため故意の不正は言語道断で犯罪行為とみなされかねず、取消処分を受けるのは当然です。過去には、詐欺的行為と認識されたうえで、関与した医師が医師免許に関する処分を受けた事例もあります。不正を行う医療機関は極一部で、ほとんどの医療機関は故意に不正を行うことはないでしょう。日常から適正、適切な診療報酬請求を完璧に行う不断の努力が不可欠と考えます。ご自分が経営や管理する医療機関の従事者から、内部通報されたら洒落にもなりません。

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