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第6回 保険診療で収益を確保するために
- 2024.01.01
- 《連載》保険診療監査官の部屋
診療報酬請求には攻めと守りが考えられますが、今回は両方の視点から、診療報酬明細書(レセプト)の作成及び保険外併用療養費に関して確認しましょう。
レセプトは、審査支払機関及び保険者の審査・点検の結果によって返戻・査定を受けることがあります。返戻・査定は毎月の収益に影響するだけではなく、返戻・査定を受けたものを再提出・再審査請求する際の手間は少なくありません。事前に過去の返戻・査定の例を十分に点検確認することが重要です。
また、個別指導ではレセプトと診療録等を照合して指導が行われますので、このことからもレセプトを的確に作成して審査支払機関へ提出する必要があります。レセプトの作成に関しては、厚生労働省のホームページにおいて、集団指導用資料「保険診療の理解のために」が公表されており、提出前点検時の注意点の一例が示されていますので紹介します。
【傷病名】
・ 診療録に記載(あるいは医療情報システムに登録)した傷病名と一致しているか。
・ 査定等を未然に防ぐことを目的とした実態のない架空の傷病名(いわゆる「レセプト病名」)が記載されていないか。
・ 疑い病名、急性病名等が長期間にわたり放置されていないか。
・ 診療開始日が、レセプトと診療録とで一致しているか。
【請求内容】
・ レセプトの請求内容は、診療録の診療内容と一致しているか。
・ 診療録への必要記載事項が定められた項目の請求については、必要な事項がきちんと診療録に記載されているか。
・ 医師が実施していない医学管理料等が算定されていないか。また、同一の医学管理料等が、入院と外来とで重複して算定されていないか。
・ 中止、取消した薬剤等が誤って算定されていないか。また、処置等に用いた薬剤を投薬欄に記載するなど、誤った場所に記載していないか。
・ 処置名、術式は、実際に行った診療内容と合致しているか。
保険診療は、その医療の内容について細かくルールが規定されており、規定されていない医療行為やサービスを受けることはできません。また、ルール上の医療サービスとルール外の医療サービスを同時並行で受ける「混合診療」は、一部の例外を除き認められていません。例外的に保険診療との併用が認められているのは、「保険外併用療養費」として区分されており、①評価療養(保険導入のための評価を行うもの)②選定療養(保険導入を前提としないもの)③患者申出療養(患者の申出を起点とする保険導入のための評価を行うもの)の3種類があります。
選定療養のひとつである特別の療養環境の提供(いわゆる「差額ベッド」)は、各病院において一般的に提供されています。実施に伴う特別な料金については、その徴収の対象になる療養に要するものとして、社会的に見て妥当適切な範囲の額とされており、厚生局長に所定の様式により報告することとされています。なお、患者の自己選択の保証が大原則となりますので、病院の都合によって提供するときは、特別な料金を徴収することはできません。しかし、患者の自己選択を保証の上、入院サービスなどの付加価値を患者のニーズに応じて高め入院中の環境をより一層向上させるなどして、諸物価高騰も考慮しながら適切に料金を見直し収益増につなげることも一考ではないでしょうか。
レセプトの作成及び保険外併用療養費に関して、攻めと守りの両方の視点から、収益を確保するとともに増収を獲得しましょう。